外国人の税金・社会保険料の不払いが在留資格に与える深刻な影響

税金・社会保険料の影響

近年、日本政府は、在留外国人による税金や社会保険料の不払いを防ぐための対策を、本格的に強化し始めています。2025年6月に公表された経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)にも、未納情報を在留審査に活用する方針が明記されました。

「知らなかった」「うっかり忘れていた」というだけの、ほんの少しの納付漏れが、将来の在留資格の更新や永住許可申請において、致命的な結果を招く時代が目前に迫っています。 本記事では、この新しい政府の動きと、ご自身の在留資格を守るために今知っておくべきことについて、専門家の視点から詳しく解説します。

目次

なぜ、今この問題が厳格化しているのか?

厚生労働省の調査によれば、外国人の方の国民健康保険料の納付率は63%と、日本人を含めた全体の93%を大きく下回っているのが現状です。 こうした状況は、日本の医療保険制度の維持や、公平性の観点から大きな問題とされています。

また、国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2070年には日本の人口に占める外国人の割合は1割を超える見通しです。 こうした背景から、政府は省庁間の情報連携システムを整備し、公的義務の履行状況をより厳格に審査する方針を固めています。

【政府の新対策】今後、未納者には何が起こるのか?

政府が現在検討している、税金や社会保険料の未納者に対する具体的な措置は、以下の通りです。

在留期間の更新・延長の不許可

保険料や税金を納めていない外国人の在留期間の更新を認めないといった措置が検討されています。

将来の再入国が著しく困難になる可能性

税金等の未納があるまま出国した場合、将来、新たな在留資格で日本に再入国しようとしても、その審査において、過去の公的義務の不履行が極めて深刻なマイナス評価となり、結果として在留資格が許可されない、という事態が起こりえます。

在留資格審査への情報連携

これまで中長期の在留資格の審査には、税金や医療費の未払い情報は直接用いられていませんでした。 しかし今後は、出入国在留管理庁と厚生労働省などが滞納状況を共有し、在留資格の審査に直接反映させる仕組みが、2027年6月をめどに構築される予定です。

【要注意】特に国民健康保険(国保)の扱いが変わります

会社員であっても、転職時の空白期間などで加入義務が生じる「国民健康保険」。この国保について、厚生労働省は新たな対策を打ち出しています。

国保保険料の「前納」制度の導入

これまで国保は、加入後に納付書が届く仕組みでした。 しかし、母国に同様の制度がなく支払いに応じないケースなどがあるため、市区町村の判断で「1年分などの保険料をまとめて前払い」してもらう、前納制度の導入が進められています。 これは、早ければ2026年4月から開始される可能性があります。

会社員でも油断禁物!陥りやすい「未納」の落とし穴

会社員の場合、所得税や社会保険料は給与から天引きされているため、在職中に滞納で問題になることはほとんどありません。しかし、状況が変化する以下のタイミングでは、ご自身で手続きが必要となり、意図せず「未納」状態に陥るリスクがあります。

  1. 入社1年目の住民税
  2. 転職時の空白期間
  3. 扶養から外れた配偶者の国民年金・国保
  4. 会社員から独立・起業した際の切り替え
  5. 帰国時の最後の住民税
ご注意

この記事は、2025年7月現在の報道や公表資料に基づいています。記載されている内容は、今後の法改正により変更される可能性があります。最新の情報については、必ず専門家にご確認ください。

まとめ

「公的義務をきちんと果たす」ことは、もはや単なるルールではなく、日本で安定した生活を続けるための、必須の条件となりつつあります。 ご自身の納付状況に少しでも不安がある方、あるいは今後の手続きについて詳しく知りたい方は、問題が大きくなる前に、ぜひ一度、私たち専門家にご相談ください。

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