安易なビザの虚偽申請が、なぜ会社と外国人の未来を破壊するのか

虚偽申請は犯罪です

「人手不足を解消するために外国人を採用したい」 その一心で、企業が誤った選択をしてしまうケースが後を絶ちません。

例えば、飲食店での接客や工場での製造ラインといった現場作業を担う人材を採用したい場合。これらの業務は、「特定技能」や将来的に導入される「育成就労」といった在留資格で受け入れれば、合法であり全く問題ありません。

しかし、「手続きが簡単そうだ」という誤解や不適切なアドバイスから、本来の業務内容とは異なる「店舗管理や通訳業務」「生産工程の管理や品質管理」といった名目で書類を作成し、「技術・人文知識・国際業務」ビザを申請・取得してしまうケースがあります。

この「実態と異なる書類で、不適切な在留資格を取得する」という安易な方法は、会社と、そして信頼してくれた外国人社員の未来を、取り返しのつかない形で破壊する「時限爆弾」を抱えるのと同じです。本記事では、その具体的なリスクの全てを専門家として解説します。

目次

会社が負う、あまりに大きい代償

「バレなければいい」という考えは、経営を根底から揺るがすリスクを軽視しています。虚偽申請が発覚した場合、会社が負う代償は計り知れません。

刑事罰(不法就労助長罪)

虚偽の申請は、外国人に不法就労をさせたとして「不法就労助長罪」に問われる可能性があります。これは「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金」という重い罰則が科される犯罪行為です。

外国人雇用の禁止

不法就労助長罪で有罪となった場合、その後3年間、新たな技能実習生や特定技能外国人などを受け入れることができなくなります。事業計画が根本から崩壊する可能性があります。

信用の失墜

法令違反の事実が公になれば、企業の社会的信用は失墜します。金融機関からの融資や、他の企業との取引、そして何より、お客様からの信頼を失うことになります。

外国人本人が失う、かけがえのない未来

虚偽の申請に加担してしまった、あるいは事情を知らずに入社してしまった外国人社員の人生も、破綻に追い込まれます。

在留資格の取消し

虚偽の申請が発覚した場合、現在の在留資格は取り消されます。

退去強制(強制送還)と再入国禁止

日本から強制的に出国させられ、原則として5年間(または10年間)、日本へ再入国することができなくなります。

永住申請への深刻な悪影響

将来、永住許可を申請する際、最も重要な要件の一つが「素行が善良であること」です。在留資格に関する虚偽申請は、この要件に根本から反する重大なマイナス評価となり、永住への道は事実上完全に閉ざされるとお考えください。

虚偽申請はなぜ必ず発覚するのか?

「申請時に許可されたのだから、もう大丈夫」ということは決してありません。時限爆弾のタイマーは、許可された瞬間から作動しています。

1. 更新時の審査

数年後の在留期間更新の際に、実際の活動内容や、納税証明書に記載された給与額と、当初の申請内容との間に矛盾が生じ、必ず発覚します。

2. 立入調査

出入国在留管理庁は、事前の連絡なしに企業を訪問する「立入調査」を行う権限を持っています。本人や同僚へのヒアリングで、実際の業務内容が明らかになります。

3. 転職時の発覚

その社員が転職しようとした際、次の会社がビザ手続きを進める中で、過去の経歴と職務内容の不整合が発覚します。

4. 内部からの通報

退職した社員や、関係者からの通報が、調査のきっかけになるケースは非常に多いです。

まとめ

虚偽申請は、会社も外国人社員も誰も幸せにならない、必ず破綻する道です。 私たち専門家の役割は、法律の抜け道を探すことではありません。法律を遵守した上で、お客様の目的を達成するための持続可能で最も確実な方法をご提案することです。

目先の利益や安易な方法に惑わされず、コンプライアンスを重視した、誠実な外国人雇用を目指す企業様を私たちは全力でサポートいたします。

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