「技術・人文知識・国際業務」ビザ|許可・不許可を分けた事例研究

ここでは、当事務所で扱った申請の中から、特に許可と不許可の判断が分かれる重要な論点を含んだ事例を、専門家の視点から深く掘り下げて解説します。

目次

事例1:NC旋盤オペレーター(「単純労働」と判断され、一度不許可になったケース)

ご相談時の状況

他事務所様で「技術・人文知識・国際業務」の更新申請を行ったものの、「雇用先において、安定的・継続的に在留資格に該当する活動を行うものとは認められません」との理由で不許可となり、在留資格が「技術・人文知識・国際業務」から「特定活動」(出国準備)に変更されたベトナム人の方からのご相談でした 。

専門家による論点分析

不許可の最大の原因は、申請人の業務である「NC旋盤のオペレーション」が、単純作業と見なされたことにあります 。実際に、過去の判例(平成26年(行ウ)第128号 退去強制令書発付処分等取消請求事件)でも、NC旋盤の操作自体は専門技術・知識を要する業務とは言えないと判断されています 。

しかし、私たちは入管の別のガイドラインに着目しました。それは「技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」という文書です 。ここには、日本人の大卒社員と同様に行われる実務研修の一環であれば、その期間中に単純労働を含む活動があっても、在留期間全体の大半を占めない限り認められる、と記載されています 。

具体的な再申請戦略と提出書類

このガイドラインに基づき、現在の業務が将来の専門業務(プログラミング等)のための「実務研修期間」であることを立証する戦略を取りました 。 実際に提出した主な書類は以下のとおりです 。

研修計画書

1年以内にプログラミング業務を開始し、その割合が次第に高くなることを明記 。

職務内容説明書

研修期間後も含め、申請人の担当業務が技能実習生の業務とどう違うのかを明確に説明 (この会社ではベトナム人の技能実習生も複数働いていました)。

採用理由書

申請人が幹部候補生であり、将来は受発注や経理業務にも携わるキャリアプランを提示 。

結果と考察

申請から約2ヶ月後、無事に在留資格変更が許可されました (在留期間1年)。
審査途中、入管から本人に「プログラミングはできるか?」「誰から教わっているか?」といった電話確認がありましたが、提出書類と矛盾なく回答できたことが許可につながったと考えられます 。
この事例は、たとえ入社当初の業務が単純作業であっても、それが日本人と同様に行われる実務研修の一環であり、長期的なキャリアプランの中で専門業務へ移行することを合理的に説明できれば、許可される可能性を示しています 。

虚偽申請は絶対に行ってはなりません。 将来プログラミングを担当すると申請しておきながら、実際にはいつまでも単純作業をさせることは不法就労助長罪に問われる可能性があります 。

事例2:専門学校卒業生(専攻と業務の関連性が不明瞭だったケース)

ご相談時の状況

日本の専門学校を卒業するベトナム人留学生からのご相談でした。専門学校での専攻学科が「ビジネス一般」で専門性が漠然としていたこと、また就職先は申請人が留学生としてアルバイトをしていた会社であり、そのアルバイトが飲食店でのものだったため、単純労働を疑われる可能性もある難しい案件でした 。

専門家による論点分析と申請戦略

専門学校卒業生は、大学卒業生よりも専攻と職務内容の「密接な関連性」が求められます 。そこで、私たちは成績証明書だけでなく、いくつかの科目の教科書を取り寄せ、担当予定業務であるマーケティングや会計に直接関連する科目を履修していたことを具体的に立証しました 。 また、採用理由書では、アルバイトと正社員採用後の業務が全く異なることを明確に記述しました 。

結果と考察

申請から約3週間という短期間で、追加の資料提出要求もなく在留資格変更許可が得られました 。専門性がはっきりしない場合でも、教科書レベルまで遡って関連性をていねいに証明することが、許可への鍵となることを示す好例です 。

まとめ:許可・不許可を分けるポイント

ご紹介した事例のように、一見すると単純労働と見なされかねない業務や、学歴と職務内容の関連性が不明瞭なケースでも、法的根拠やガイドラインを正しく理解し、適切な書類を作成・提出することで、許可を得られる可能性は十分にあります。
「他で不許可になった」
「うちのケースは難しいかもしれない」
そう感じられたときこそ、あきらめる前にぜひ一度、当事務所にご相談ください。

「技術・人文知識・国際業務」の申請サポートについて

当事務所では、「技術・人文知識・国際業務」に関する各種申請のサポートを承っております。

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