高度人材ポイント制による永住許可申請ガイド|80点で1年、70点で3年に短縮

日本の永住許可を取得するには、原則として「継続して10年以上」日本に在留していることが必要です(10年ルール)。
しかし、「高度人材ポイント制」を利用することで、この期間が最短1年(80点以上)または3年(70点以上)に大幅短縮されます。
「自分は『高度専門職』のビザではないから無関係だ」と誤解されている方も多いのですが、この制度はビザの種類に関わらず、ポイント計算さえできれば利用可能です。
この記事では、入管業務を専門とする行政書士の視点から、高度人材ポイント制を利用した永住申請の要件、実務上の注意点、そしてご自身のポイントを簡易的に計算する方法について詳しく解説します。
永住許可全体の基本的な条件を確認したい方は、こちらの総合ガイドからご覧ください。

「高度人材」および「ポイント制」とは何か?
そもそも「高度人材」とは何でしょうか? なぜ日本政府はこのような制度を作ったのでしょうか。
1. 高度人材とは?(制度の目的)
出入国在留管理局が定義する「高度人材」とは、かんたんに言えば「日本の経済成長や学術研究に大きく貢献してくれると期待される、優秀な外国人材」のことです。
日本は現在、労働力不足や国際競争力の強化という課題に直面しています。そこで政府は、専門的な知識や技術を持つ優秀な外国人に「ぜひ日本に来て、長く活躍してほしい」と考えました。
そのための「優遇措置」として作られたのが、この「高度人材ポイント制」です。
2. 高度人材ポイント制とは?(仕組み)
「誰が優秀(高度人材)か」を客観的に判断するためのモノサシ(仕組み)が「ポイント制」です。
申請者の「学歴」「職歴」「年収」「年齢」「日本語能力」といった様々な項目を点数化(ポイント化)し、合計点が一定(70点以上)に達した人を「高度人材」と認定します。
この認定を受けると、永住権の申請期間が短縮される(10年→3年または1年)だけでなく、配偶者の就労が許可されたり、親の帯同が認められたりといった、様々な優遇措置が受けられます。
この記事で解説する「永住申請」は、このポイント制の仕組みを利用するものです。
高度人材による永住申請の2つのパターン(結論)
高度人材ポイント制を利用して永住申請する場合、以下の2つのパターンがあります。どちらも「申請時」と、その基準となる「1年(または3年)前」の両方の時点でポイント計算を満たしている必要があります。
1. 80点以上(最短1年で申請)
「永住申請する日」から1年前の時点、および「申請時」の両方でポイントが80点以上ある方。
(例:2025年11月に申請する場合、2024年11月と2025年11月の両時点で80点以上)
2. 70点以上(最短3年で申請)
「永住申請する日」から3年前の時点、および「申請時」の両方でポイントが70点以上ある方。
(例:2025年11月に申請する場合、2022年11月と2025年11月の両時点で70点以上)
【専門家の視点】「高度専門職」ビザは不要
重要なのは、ご自身のビザが「高度専門職」である必要はない、という点です。
現在のごビザが「技術・人文知識・国際業務」や「経営・管理」などであっても、出入国在留管理局が定める「ポイント計算表」に基づいてご自身の経歴を計算し、70点または80点を超えていることを客観的な資料で証明できれば、この制度を利用できます。
ご自身のポイントを計算してみましょう(簡易版)
まずは、ご自身のポイントが何点になるか、主要な項目で計算してみましょう。
(※この計算は目安です。ボーナスポイントや実務上の細かいルールは含まれていません)
主要ポイントの早見表(「高度専門・技術分野」の場合)
ご自身の経歴(学歴、職歴、年齢、年収、日本語能力)が何点になるか、ご自身で足し算をしてみてください。
- 1. 学歴
- 博士号: 30点
- 修士号: 20点
- 学士号(大学卒業): 10点
- 2. 職歴(実務経験)
- 10年以上: 20点
- 7年以上: 15点
- 5年以上: 10点
- 3年以上: 5点
- 3. 年齢(申請時)
- 29歳以下: 15点
- 34歳以下: 10点
- 39歳以下: 5点
- 4. 年収(「高度専門・技術分野」の場合)
- (例:30歳未満で)1,000万円以上: 40点
- (例:30歳未満で)800万円以上: 30点
- (例:35歳~39歳で)600万円以上: 15点
- …(※ご自身の年齢区分に合わせてご確認ください)
- 5. 日本語能力
- N1または大学で日本語専攻: 15点
- N2: 10点
(※年収の点数は年齢区分により変動します。)
【ご注意】
これは「高度専門・技術分野」の簡易計算です。「会社の経営者・管理者」の方は年収の基準が異なります。
【重要】この計算結果だけで判断しないでください!
この自動計算には、「イノベーション促進措置」や「J-Startup企業への投資」といった、判断が難しい「ボーナスポイント(最大10点)」は含まれていません。
また、合計点数が70点や80点を超えていても、実務上の落とし穴によって「ポイントとして認められない」ケースも多発しています(詳しくは次章で解説します)。
「ギリギリ70点に届かない…」
「転職したばかりで年収の計算が不安…」という方ほど、専門家による正確なポイント計算が必要です。ご自身では気づかなかった加点ポイントが見つかる可能性もあります。まずは一度、オフィス鈴木までお気軽にご相談ください。
【具体例】こんな人が70点/80点になります
「高度専門・技術分野」で働く方の典型的なモデルケースを2つご紹介します。
ケース1:70点(3年で永住申請)のAさん
Aさんは、日本のIT企業で働く32歳のシステムエンジニアです。
年齢: 32歳(34歳以下) → 10点
学歴: ベトナムの大学(学士)を卒業 → 10点
職歴: 実務経験7年 → 15点
年収: 750万円(32歳で700万円以上) → 25点
日本語能力: 日本語能力試験 N2 → 10点
合計: 10 + 10 + 15 + 25 + 10 = 70点
Aさんは「70点」の基準を満たすため、日本での在留期間が3年あれば永住申請が可能です。
ケース2:80点以上(1年で永住申請)のBさん
Bさんは、日本のメーカーで働く29歳のデータサイエンティストです。
年齢: 29歳(29歳以下) → 15点
学歴: 日本の大学院(修士)を修了 → 20点
職歴: 実務経験3年 → 5点
年収: 850万円(29歳で800万円以上) → 30点
日本語能力: 日本語能力試験 N1 → 15点
合計: 15 + 20 + 5 + 30 + 15 = 85点
Bさんは「80点」の基準を大きく超えています。日本での在留期間が1年あれば永住申請が可能です。
ポイント計算の実務上の注意点(専門家の視点)
ポイント計算は、ただ計算表を足し算するだけではありません。その点数を「どう証明するか(疎明資料)」が審査の鍵であり、特に以下の点で多くの方がつまずいています。
1. 「年収」の証明
最も厳しく審査され、最も解釈が難しい項目です。
- 「年収」とは: 原則として「課税証明書」に記載される金額です。
- 転職した場合: 申請直前に転職して年収が上がっても、それは「安定性」とは見なされません。「前職の年収」と「現職の見込み年収」の両方を合理的に説明する必要があります。
- いつの年収か: 3年(または1年)前と、申請時の両方の証明(課税証明書や納税証明書)が必要です。
2. 「職歴」の証明
- 実務経験の範囲: 「技術・人文知識・国際業務」の場合、関連する業務の経験のみがカウントされます。学生時代のアルバイト等は原則含まれません。
- 証明資料: 「在職証明書」に具体的な業務内容を記載してもらう必要があります。
3. 「日本語能力」の証明
- N1(15点)またはN2(10点)の合格証が最も明確です。
- 「日本の大学・大学院を卒業(10点)」も認められますが、これは学歴のポイントとは別に加点されます。
4. 「年齢」の証明
- いつの時点の年齢か: ポイント計算は「申請時」の年齢(満年齢)に基づきます。30歳の誕生日の直前に申請する(15点)か、直後に申請する(10点)かで点数が変わるため、申請のタイミングが非常に重要です。
高度人材での永住申請に必要な書類
通常の永住申請書類(申請書、理由書、身元保証書など)に加えて、以下の「ポイント計算を証明する」ための書類が必要になります。
- ポイント計算表
出入国在留管理局の様式で作成し、ご自身が70点/80点以上であることを示す必要があります。 - ポイント計算の疎明資料(裏付け書類)(例)
- 学歴: 卒業証明書
- 職歴: 在職証明書
- 年収: 課税証明書、納税証明書
- 日本語能力: N1/N2の合格証、大学の卒業証明書
- 年齢: パスポートの写し、または住民票
まとめ:複雑なポイント計算は専門家にお任せください
高度人材ポイント制は、永住許可への強力な近道です。しかし、その計算と証明は非常に複雑で、専門的な知識が要求されます。
ご自身の計算が正しいか不安な方、ボーナスポイントの可能性を知りたい方、そして複雑な書類作成を任せたい方は、ぜひオフィス鈴木にご相談ください。
「永住者」の申請サポートについて
当事務所では、「永住者」に関する各種申請を、専門家として強力にサポートいたします。
お客様の状況に合わせた3つの料金プランをご用意しております。