「永住許可」と「帰化」徹底比較。専門家が解説する5つの重要な視点

あなたは「日本の永住者」になりたいですか?「日本人」になりたいですか?
日本で長期間、安定して暮らしていくための最終的な選択肢として、「永住許可」と「帰化」があります。
この2つは似ているようで、その法的な地位、審査基準、そして将来のライフプラン(特に家族や資産)に与える影響が根本的に異なります。
- 永住許可(在留資格「永住者」)
「外国籍のまま」、日本での在留活動や在留期間の制限なく、永続的に住む「許可」を得ることです。 - 帰化許可(日本国籍の取得)
「元の国籍を(原則として)放棄し」、日本国籍を取得して「日本人」になることです。
「永住権」という言葉をよく耳にしますが、法律(入管法)上そのような「権利」は存在しません。あくまで「許可」であり、一定の条件(在留カードの更新忘れや犯罪、長期出国など)で取り消される可能性がある点に注意が必要です。
この記事では、法律上の違いから、将来のライフプランに関わる重要な視点まで、5つの項目で徹底的に比較・解説します。
永住申請と帰化許可申請の基本的な事項についてはこちらのページをご参照ください。


1.【基本の比較】一目でわかる「永住許可」と「帰化」の決定的違い
| 比較項目 | 永住許可(在留資格「永住者」) | 帰化許可(日本国籍の取得) |
|---|---|---|
| 法的地位 | 外国籍のまま(在留外国人) | 日本国籍を取得(日本人になる) |
| 国籍の扱い | 元の国籍を維持できる | 元の国籍を(原則)放棄・喪失する |
| 審査機関 | 出入国在留管理庁(入管) | 法務局 |
| 居住要件(原則) | 継続10年(うち就労5年)※特例あり | 継続5年(うち就労3年)※特例あり |
| 参政権・公職就任 | なし | あり(選挙権、被選挙権、公務員就任など) |
| 戸籍の有無 | 作られない | 日本の戸籍が新しく作られる |
| パスポート | 元の国籍のパスポート | 日本のパスポートを取得 |
| 退去強制 | あり(重大な犯罪など) | なし(日本人になるため) |
| 「許可」の永続性 | 取り消される場合がある (在留カード更新[7年ごと]忘れ、再入国許可[最大5年]切れ など) | 原則、失効しない (海外に何十年住んでもOK) |
2.【審査の視点】「入管」と「法務局」— 審査の目的と難易度の違い
申請プロセスにおける、見落としがちな「審査の質」の違いを説明します。
- 永住許可(入管): 「過去の実績」を重視する審査です。
「日本国の利益に合致するか」を判断します(素行、納税、生計の安定性)。これらはガイドラインで詳細に基準が示されていますが、最終的な許可は法務大臣の「裁量」によって総合的に判断されます。 - 帰化許可(法務局): 「将来の適格性」も重視する審査です。
「日本人としてふさわしいか」を判断します(居住歴、素行、生計、日本語能力、思想など)。要件を満たしていても、法務大臣の「裁量」により総合的に判断されます。
【審査の視点 】審査の「重さ」と面接
帰化審査では、永住審査にはない「面接(家族同席の場合も)」が必須です。場合によっては「家庭訪問・職場訪問」が実施されることもあります。これは、申請者の「日本社会への同化度」を総合的に見るためであり、審査の「重さ」が異なります。
3.【法律上の立場】「相続」や「離婚」で適用される法律の違い(★法律・資産上の重要視点)
これも非常に見落とされがちな、資産や身分関係における違いです。
永住許可(永住者)の場合
永住者は「外国人」であるため、相続(そうぞく)や離婚(りこん)の際に、どの国の法律が適用されるか(=準拠法)が複雑になります。
原則として、相続は「被相続人(亡くなった方)の本国法」が適用されます。
→ 例:ベトナム国籍の永住者が亡くなった場合、日本の不動産を相続するにも、ベトナムの相続法が関わってくる可能性があり、手続きが非常に煩雑になります。
帰化許可(日本人)の場合
完全に「日本人」になるため、相続も離婚も、すべて日本の法律(民法)が適用されます。
→ 将来の資産承継や身分関係の整理が、日本国内の手続きだけで完結します。
4.【海外との関係】「永住許可」の“永続性”に関する誤解
「永住」という言葉から誤解されがちな、「日本を離れた場合」のリスクを解説します。
永住許可(永住者)の場合
日本を出国する場合、「みなし再入国許可(1年)」または「再入国許可(最大5年)」が必須です。
(最重要ポイント)たとえ許可を取っていても、海外での滞在が長期間に及び「生活の基盤が日本にない」と判断された場合、または7年ごとの在留カードの更新手続きを怠った場合、永住許可は失効・取消しの対象となります。
帰化許可(日本人)の場合
「日本人」であるため、何十年海外に住んでも日本国籍は失われません。海外からいつでも日本に戻ってくることができ、再入国の手続きも不要です(日本のパスポートで帰国するだけです)。
5.【行政手続き】「戸籍謄本」の有無という事務的メリット
日本社会で生活する上での、事務手続き上の大きな違いです。
永住許可(永住者)の場合
戸籍はありません。身分証明は「住民票」と「在留カード」です。
日本で結婚したり、子供が生まれたりした場合、自身の身分関係(親子・婚姻)を公的に証明するためには、一生涯、本国の「出生証明書」や「婚姻証明書」とその日本語訳 が必要になります。
帰化許可(日本人)の場合
日本の「戸籍謄本」が作られます。
→ これ以降、パスポートの申請、銀行での相続手続き、子供の入学手続きなど、あらゆる身分証明が「戸籍謄本1通」で完結します。
まとめ:ご自身の決断(「永住」か「帰化」か)を再確認するために
ここまで、「永住許可」と「帰化」の7つの重要な視点を比較してきました。
この記事で解説した、特に「相続」や「海外との関係」は、ご自身の10年後、20年後のライフプランに直結する重要なポイントです。
どちらの方がご自身そしてご家族にとって適しているのか、じっくり考えてから決断なさってください。
私たち専門家の役割は、そのお客様のご決断が、この記事で解説したような(ご本人にとって不利になるような)重大な見落としがないかを確認し、ご意向を再確認した上で、その申請を万全の体制でサポートすることです。
「永住許可」がおすすめな方:
・元の国籍やパスポートを絶対に手放したくない方
・将来、本国で兵役の義務などを果たす必要がある方
・将来的に本国へ戻る(または他国へ移住する)可能性がある方
「帰化許可」がおすすめな方:
・相続や資産管理を、すべて日本の法律でシンプルに完結させたい方
・将来、海外に長期滞在する可能性があっても、日本との繋がりを失いたくない方
・日本の参政権を持ち、日本国民としての権利と義務を果たしたい方
ご自身の決断を再確認したい方、要件を満たしているか診断したい方は、ぜひ一度ご相談ください。
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