日本での生活を永続的なものにする在留資格「永住者」。在留期間の更新が不要となり、活動にも制限がなくなるため、日本で長期的な人生設計を考える多くの方にとって、大きな目標の一つです。この「永住許可」を得るためには、有名な「原則10年の居住要件」がありますが、実は、ご自身の状況によっては、その期間が大幅に短縮される特例が存在します。 また、審査で非常に重視される「年収」についても、明確な基準が公表されていないため、多くの方が不安に感じています。 本記事では、永住許可申請における、この2大テーマ「居住要件の特例」と「年収の目安」について、専門家が詳しく解説します。
おさらい:永住許可の「原則10年」ルールとは
まず、永住許可の国益要件における、基本ルールを確認しましょう。
- 原則として、引き続き10年以上、日本に在留していること。
- ただし、この10年のうち、就労資格又は居住資格をもって、引き続き5年以上在留していることが必要です。
この大原則を踏まえた上で、次に解説する特例に、ご自身が当てはまるかをご確認ください。
【居住要件の特例】10年を待たずに永住申請できるケース
以下のいずれかに該当する方は、「10年ルール」が緩和され、より短い期間で永住許可申請が可能です。
日本人・永住者・特別永住者の配偶者
要件: 実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上日本に在留していること。
日本人・永住者・特別永住者の実子または特別養子
要件: 引き続き1年以上日本に在留していること。
「定住者」の在留資格を持つ方
要件: 引き続き5年以上日本に在留していること。
「高度専門職」のポイントをお持ちの方
- ポイントが70点以上ある方: 引き続き3年間、高度専門職外国人として活動していること。
- ポイントが80点以上ある方: 引き続き1年間、高度専門職外国人として活動していること。
日本への貢献が認められる方
外交、社会、経済、文化などの分野で、日本への貢献が特に大きいと認められた方。これは、ノーベル賞受賞者など、ごく限定的なケースです。
【年収の目安】独立生計要件は、いくらあれば満たせるのか?
出入国在留管理庁は、「年収〇〇万円以上」といった明確な基準を公表していません。しかし、実務上の審査では、申請者が公共の負担にならず、安定した生活を継続できるかどうかが厳しく見られます。
基本的な年収の目安
一般的に、永住許可を取得するためには、単身者の場合で年収300万円以上が、一つの大きな目安とされています。そして、最も重要なのは、この年収額を継続して安定的に得ていることです。審査では過去5年分の収入状況が見られるため、直近の1年だけ年収が高くても、それ以前の年収が低い場合は、安定性がないと判断される可能性があります。
扶養家族がいる場合
扶養している配偶者やお子様がいる場合、必要な年収の目安は上がります。一般的には、扶養家族が一人増えるごとに、70万円〜80万円程度を年収に加算して考える必要があるとされています。
年収が目安に届かなくても許可されるケース
しかし、この年収基準は絶対的なものではありません。年収が目安額に届いていなくても、他の要素を総合的に考慮した結果、永住が許可されるケースは存在します。
- 世帯年収での判断
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申請者本人の年収が300万円に満たなくても、配偶者に安定した収入があれば、世帯全体の年収で判断してもらえます。ただし、家族滞在の配偶者の資格外活動(アルバイト)による収入は、原則としてこの合算の対象とはなりませんので注意が必要です。
- 資産による補強
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年収が少し足りない場合でも、十分な預貯金や、ローンを完済した持ち家(不動産)などの資産がある場合、それが安定した生活基盤の証明として、プラスに考慮されることがあります。ただし、あくまで補強的な要素であり、安定した収入があることが大前提となります。
- 地域差の考慮
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都心部と地方では、生活にかかるコスト(特に家賃)が大きく異なります。そのため、地方在-住で、年収が都心部の基準より低くても、その地域で安定した生活を送るには十分である、と合理的に説明できれば、許可の可能性はあります。
重要なのは『安定性と総合的な判断』
年収額はあくまで目安であり、入管は、過去からの安定性や、資産状況、家族構成などを総合的に見て、将来にわたって安定した生活を送れるかを判断します。
永住許可申請は、ご自身の状況によって、満たすべき要件や準備すべき書類が大きく異なります。インターネット上の情報だけで判断せず、ご自身のケースがどの要件に当てはまるのか、専門家と一緒に確認することが、許可への一番の近道です。
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