「特定技能」と「技術・人文知識・国際業務(技人国)」。どちらも日本で働く外国人のための在留資格ですが、その目的や対象となる業務、要件は全く異なります。採用したい人材や、任せたい仕事内容によって、どちらのビザを目指すべきかは変わってきます。 この選択を誤ると、採用計画全体が頓挫しかねません。本記事では、企業の採用ご担当者様に向けて、この2つの在留資格の決定的な違いを、比較しながら分かりやすく解説します。
在留資格「特定技能」とは
特定技能は、日本が直面している深刻な人手不足を解消するために、2019年に創設された比較的新しい在留資格(ビザ)です。これまでの制度では難しかった「単純労働」を含む幅広い業務で、外国人を「即戦力」として受け入れることを可能にした画期的な制度です。
特定技能の種類と目的
特定技能には、「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があります。
特定技能1号
- 目的:
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特定産業分野における「相当程度の知識又は経験を必要とする技能」を持つ外国人を受け入れます。これは、特定の業務を即座にこなせるレベルの技能を指します。
- 在留期間:
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最長で通算5年間日本に滞在し、就労することが可能です。
- 対象分野:
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法務大臣が指定する、人手不足が深刻な特定の産業分野に限られます。例えば、介護、建設、農業、漁業、製造業(機械金属加工、電気電子機器組立て、工業製品製造、プラスチック成形、塗装、工業包装、金属熱処理など)、外食業など多岐にわたります。
特定技能2号
- 目的:
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特定産業分野における「熟練した技能」を持つ外国人を受け入れます。これは、業務を非常に高度なレベルでこなせる、熟練した技術を持つ人材を指します。
- 在留期間:
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1号と異なり、在留期間の更新を繰り返すことで、長期的に日本に滞在・就労が可能です。
- 対象分野:
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特定技能1号よりも限定された分野で、熟練した技能が求められます。現時点では、建設分野や造船・舶用工業分野などの一部の分野が対象となっています。
「特定技能」と「技人国」の7つの違い 比較表
項目 | 特定技能 | 技術・人文知識・国際業務(技人国) |
---|---|---|
目的 | 人手不足が深刻な特定産業分野の労働力確保 | 専門的・技術的分野の知識や能力を活かす活動 |
対象業務 | 12の特定産業分野における、現場労働を含む相当程度の技能を要する業務 | 学術的素養を背景とする専門的なデスクワークや技術開発など(単純労働は不可) |
学歴要件 | 原則として不要 | 大学卒業または専門学校卒業(専門士以上)が原則 |
試験の要否 | 技能測定試験と日本語試験の合格が必須 | 原則として不要(学歴で判断) |
家族帯同 | 1号は不可、2号は可 | 可能(配偶者・子) |
転職の範囲 | 同一の業務区分内であれば可能 | 在留資格の範囲内で、より自由な転職が可能 |
永住への道 | 2号になれば可能性あり | 要件を満たせば可能性あり |
【ケース別】貴社が採用すべきなのは、どちらの在留資格?
採用したい人材の学歴やスキル、そして、任せたい仕事内容によって、目指すべき在留資格は異なります。具体的なケースで見ていきましょう。
ケース①:大卒の専門職人材を、企画・管理業務で採用したい
- 任せたい業務:
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海外の大学で経営学を専攻した外国人を、本社の海外事業部で、マーケティングや貿易事務の担当者として採用したい。
- 該当する在留資格:
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この場合は「技術・人文知識・国際業務」を目指します。大学で学んだ専門知識を活かす、専門的なデスクワークであり、特定技能の対象業務ではないためです。
ケース②:意欲のある若手を、飲食店で採用したい
- 任せたい業務:
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日本で働く意欲が高く、「外食業技能測定試験」と「日本語能力試験」に合格した外国人を、日本国内のレストランで、調理や接客を担うスタッフとして採用したい。
- 該当する在留資格:
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この場合は、特定技能制度の中の「外食業」分野として、「特定技能」の在留資格取得を目指します。飲食店の調理や接客といった現場業務は、技人国ビザの対象外です。このケースのように、学歴や実務経験ではなく、試験に合格することで、日本で働くために必要な技能と知識を証明するのが、特定技能制度の大きな特徴です。
まとめ
「特定技能」と「技人国」は、どちらが優れているというものではなく、目的と役割が全く異なります。企業のニーズと、採用したい人材の経歴やスキルを照らし合わせ、最適な在留資格を選択することが、採用成功の第一歩です。
どちらの在留資格に該当するのか、判断に迷われた際はぜひ一度ご相談ください。お客様の状況をていねいにヒアリングし、最も確実な道筋をご提案します。
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